ヘアスタイリスト・shucoさん 後編

パリで修業し、帰国後、さまざまなメディアやコレクションで活躍をする、ヘアスタイリストのshucoさん。インタビューの後半では、ヘアドネーションを始めたきっかけに迫ります。

どういう人物に見られたいか、本質を見抜くこと

「今はもうオープンにしているのですが、私、子どもの頃からずっと脱毛症に悩んでいたんです。外見へのコンプレックスも強くて。脱毛症を隠すために幼い時から髪の毛を伸ばしたり、アレンジしたり、一番ひどかった短大生のときは、ターバンを巻いたり、とにかく気になるところを隠していました。
でも、自分に合う鍼治療に出会い、状態がとても良くなったんです。ばっさり髪を切ったら、周囲の反応がすごかった! ロングヘアのときは、“大和なでしこ”なおとなしい子だったのに、ショートにした途端、アクティブな人というように、がらりと印象が変わった。
ああ、髪型次第で、自分がなりたい人物にいくらでもなれるんだ、って。見せたいように印象付けられることに気づきました。それ以降、仕事でも、どう見られたいか、どういう人になりたいかを聞き出してから、髪型を提案するようにしています。そう、単に髪を切るのではなく、キャラクターを与えることを大切にしていますね」。

ハッピーな気持ちを還元したい、と始めたヘアドネーション

毛髪診断士の資格を持つshucoさんは、ヘアスタイリストの仕事に加え、ヘアドネーション(髪の毛の寄付)活動にも積極的。
「2015年頃かな。私の人生がとっても充実していたんです。しあわせに満たされていた。身辺もすっきりして、幸福感があふれ出ていた(笑)。それで、自分だけが幸せじゃなくて、誰かにこのハッピーな気持ちを還元したい!他人のためにいくらでも、何でもしたい!と思ったんですよね」

ヘアドネーションの記事を見て、自然と活動をスタート。当初は、ボランティアでカットする活動を始め、大阪にある18歳未満の子にウィッグを送る活動も行っている団体に寄付をしていたそう。
「できる範囲でまずやろうと。活動を広めるために、SNSにアップしていい方に限って、無料でカットしていました。経験者の私なら脱毛症に悩む思春期の子たちの気持ちがわかるかな、と。不登校気味になったり、外見コンプレックスに悩んだり。私だって、数年前まで脱毛症だったと言えなかった。強風が吹く場所を避けていました。見知らぬ人から気を遣われるのがしんどかったから。そういう人が髪を切る側にいることを伝えたいですし、悩んでいる若い子たちの希望になれたら、と。 髪の毛があることで精神状態が大きく変わる現場を何度も目にするのは、しあわせな瞬間です。今はなかなか忙しくて、以前ほどヘアドネーションの活動ができていないのですが、また時間を見つけて取り組んでいきたいですね」。

自分のしあわせを願うだけではない。周囲の人たちにも、そしてみんなにも――。shucoさんの想いは、ダイアンボヌールの「産地や作り手、ユーザー、関係するすべての人々をしあわせに.したい」というフィロソフィーともリンクします。

何事にもポジティブかつ、心の機微にも敏感なshucoさん。
その姿勢は、まさにボヌール(しあわせ)上手と言えそうです。

【profile】
shuco:
ヘアスタイリスト/毛髪診断士
東京でのサロンワークを経てパリに渡り、各国のモード誌などで活躍。帰国後も様々な媒体でセンスを発揮し、ヘアを通じた社会貢献活動にも注力している。