5月にだけ収穫される希少なバラ「ローズ・ド・メイ」

花の女王として、古くから愛され続けているローズ

華やかな見た目と芳醇な香りで、花の女王として古くから愛と幸せの象徴として大切にされ続けているローズ。フランスのプロヴァンス地域で13世紀頃から栽培が始まったとされていますが、18世紀後半まではその品種は30種類しかなかったそう。ナポレオンの最初の妻であるジョセフィーヌが、フランスのローズブリーダーであるジャック・ルイス・デセメットにローズの品種改良を要請したことにより、そこから約10年間で約200種類もの品種改良されたローズが開発されました。これらのローズはジョセフィーヌが持つローズのメゾンに寄贈され、その後18世紀のうちに、約600種類のローズが開発されたと記録されています。

希少素材の女王、「ローズ・ド・メイ」とは?

ローズ・ド・メイはグラースでも5月にだけ収穫される稀少なバラ。約300個の花から、わずか1滴の精油しか抽出できないため、極めて入手困難な幻の香りとすら言われるほど。その稀少性の高さから、プロヴァンスやグラース地方で大切に栽培されてきました。特にグラース(香りの聖地)で栽培されるローズ・ド・メイは、芳醇でボリューム感があり、かつ甘くて官能的と称され、幸福感と満足感を得られる美しい香りとして多くの人々に愛されてきました。

メゾンブランドをもトリコにする「ローズ・ド・メイ」

フレグランス用の花を栽培する若き生産者たちと、メゾン パルファン ディオールがパートナーシップを結ぶようになって10年。グラースで栽培されるローズ・ド・メイの約90%をクリスチャン・ディオールが所有しています。ゲランの香りの哲学を現代に生かせる調香師の1人として知られるティエリー・ワッサー氏は、今でもローズ・ド・メイの香りを追求しています。「ブルガリア、モロッコ、トルコでも収穫されているローズの中でも、ローズ・ド・メイの香りは別格。フルーティなニュアンスに、ハニー香。」と、ワインを品評するような表現で、ローズ・ド・メイを絶賛しています。

化学的には絶対に再現できない香り「ローズ・ド・メイ」

現在、サイエンスの発達により香りの分析は格段に進歩し、数十年的と比較すると再現率も10倍になったとされています。しかし、ローズ・ド・メイの分子構造は300以上あるということが判明し、化学では絶対に再現できない香りであり、その分子構造の一部はいまだに解明すらできていないそう。再現できない香り(=合成では作れない香り)としてローズ・ド・メイはその稀少価値をさらに高めているのです。